シェフズジャーニー<香川>
こんにちは、「ニューヨーク グリル」料理長のポール ガヤフスキーです。
今夏、「ニューヨーク グリル」では、香川県小豆島のサステナブルな循環型農業で育まれたオリーブ牛を使用したスペシャルディナー「オリーブ トゥ ビーフ」を提供しています。先日、その産地である香川県を訪ねる機会を得ました。
日本列島の南西に位置する香川県は、四国本土の土地と小さな島々で構成されており、天然資源に恵まれ、小ぶりながらも良質な食材を豊富に生み出しています。香川では、全ての農作物が早く成長するのだと地元の方がおっしゃっていました。
私たちが最初に訪れたのは牛肉加工場で、「ニューヨーク グリル」で実際に提供しているオリーブ牛が厳密に管理、加工されています。熟成工程や品質維持の方法等を学ぶとともに、オリーブ牛の繊細な味と香り、味の良し悪しに大きく影響するオレイン酸数値の高さ、柔らかな肉質の理由などについての理解が深まりました。
続いて向かったのは、「オリーブ トゥ ビーフ」コースのアミューズとして使用しているオリーブを栽培する農園です。一面に青々と生い茂る樹木には、小粒ながらしっかりとした実がついていて、その味わいはほのかな甘みの中にすっきり感もあり、他の産地のオリーブとは異なる印象を持ちました。
翌日、私たちはオリーブラインフェリーに乗り、オリーブ牛発祥の地である小豆島へ。
70代になった今もなお、農場運営に力を注ぐ、オリーブ牛の生みの親、石井正樹さんにお目にかかったのです。
10代の頃、野菜の栽培をしながら循環型農業への憧れを持ち続けていたという石井さん。その後、オリーブ農園、畜産業者、香川県と手を取り合い、持続可能な農業の輪を作り上げ、かつては産業廃棄物だったオリーブの絞りかすを、家畜の飼料とするまでのノウハウを確立されたそうです。
農場はオリーブの木々と豊かな自然に囲まれ、飼育されている牛たちはどれも心地よさそうに過ごしていました。牛の穏やかな目元からは、石井さんの日頃の丹精と愛情が感じられ、赤身とサシの均等なバランスや肉質の良さは全て、これらの細やかなケアによるものなのだと納得できました。
彼がこれまで築いたもの、これからの世代へ引き継ぎたいものについて詳しく話を伺うにつれ、石井さんの思いは、香川県だけではなく、日本全体、そして世界へと広がっていくだろうと私は確信しました。
私たちが「ニューヨーク グリル」で提供する食材はどれも最高品質で、真摯に謙虚に自然と向き合う人々の情熱と誇りにより生まれたものばかりです。香川の生産者の人々にとっては、量ではなく質を追求することこそが重要なのだとあらめて実感しました。素晴らしい経験をさせていただき、豊かな食材を育む皆様、香川県庁の方々、この旅を支えてくれた全員に心から感謝しています。
シェフ ポールによる石井さんへのインタビューもぜひこちらよりご覧ください。
これらの食材を使用したスペシャルメニューの詳細はこちらでご参照いただけます。