シェフズ ジャーニー <宮城> 後篇
(前篇からつづく)
翌朝、2011年3月の地震の際の津波で大きな被害を受けた石巻港へ行きましたが、地元の方々の努力でかなり復元され、国内でも有数の港として運用されています。
石巻港代表の須能さんにお会いし、施設の見学だけでなく、競りにかけられる大量の魚を運搬する様子も見せていただきました。ここから、築地市場をはじめとする国内の魚市場へ送られるのです。
南三陸では船で沖へ行き、北海道産帆立の養殖や、夢見ていた帆立の採取も見学しました。豊かな海の恵みを目のあたりにしながら、2011年の津波で設備が流される被害を受け、苦労して育て上げた全てのものが瞬時に消えてしまったお話も伺いました。しかし、これを機に新たに湾を建設してスペースを確保し、より自然な魚介類生育のサイクルをつくりあげることに成功したそうです。私たちも帆立を引き揚げる作業を体験させていただき、船上でまさにとれたての帆立を味わうことができました。今までで最も美味しい帆立だったことは言うまでもありません。
今回の旅で最後に伺ったのは、アップルサイダーと国産ワインを造る秋保ワイナリーです。米国への留学経験もある毛利さんが堪能な英語で案内してくれました。宮城では大量の林檎が収穫されるものの、販路が限られているため、農家をサポートしながら宮城県経済にも貢献したいとの思いでアップルサイダーの生産を始めたそうです。サイダーの原料の林檎はサワールージュ、ふじ、ジョナゴールドで、手作業で瓶詰めされ、年間5万本を生産しています。宮城県内で販売されていますが、京都や東京のお寿司屋さんにも提供し、ビールよりもお寿司との相性が良いと好評だそうです。
サイダーの瓶詰め作業を見学した後は、屋外のブドウ畑へ。以前所有していたブドウ畑は、やはり津波で被害を受けたそうです。宮城はブドウの生育には適していないと考えられていましたが、2014年に新しい畑を購入し、どの品種がこの土地での生育に適しているか、ベストな味わいを出せるか試すために、多様なブドウを植えているそうです。毛利さんが醸造した甲州ワインを試飲させてもらいましたが、たいへん美味しい1品でした。いずれその試みが成果を生み出すことを心から願っています。
このように素晴らしい生産者の方々とお会いして、情熱に満ちたお話を伺い、大変貴重な経験となりました。彼らが丹精込めて育てた宮城産の上質な食材を使い、その思いを受け継ぎながら「ニューヨーク グリル」で10月22日(日)までスペシャルコースメニューを提供中です。
ぜひ皆様もご賞味ください!
ニューヨーク グリル&バー料理長
ステファン ヘアット