シェフズ ジャーニー <宮城> 前篇 | シェフズブログ | パーク ハイアット 東京

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Steffan Heerdt

シェフズ ジャーニー <宮城> 前篇

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こんにちは。
ニューヨーク グリル&バー」料理長のステファン ヘアットと申します。
最高の料理を提供するため、日頃から上質な食材を求めて各地を訪ね、生産者の方々と直接お会いする機会も多いのですが、8月初旬には宮城県で大変有意義な時間を過ごすことができました。

仙台駅に到着してすぐに仙台食肉市場へ行き、競りを見学させていただきましたが、宮城県から2万頭もの牛が出荷されているとは知りませんでした。さらに、昨年国内で出荷された7,300頭のA5級牛のうち、3,863頭が仙台牛だそうです。

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「和牛オリンピック」というイベントが5年おきに開催され、関連業者が集い、新たな飼育方法や種牛などに関する情報交換の場となることも伺いました。種牛も種類分けされている上、行政によって管理され、海外では飼育できないよう規制されています。日本ならではの和牛文化が確立しているのは、このようなサポートの力も大きいと思います。

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その後、実際に畜産農家を訪ね、“熊さん”の愛称で知られる石川さんにお会いしました。熊さんがとてもきめ細やかに牛たちの世話をしている姿にも心を打たれました。生後10ヵ月の牛を購入した後、1頭につき1日1kgもの発酵米を与え、2歳半で約800kgに成長するまで飼育するそうです。牛たちは穏やかで愛らしく、彼らの命の終焉を思うと、切ない気持ちをおさえられませんでした。

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その後は55年続く「星のり店」を営む星夫妻のところへ。星さんは三代目で、今も伝統的な製法にこだわり、最高級とされる海苔は皇室にも献上されています。

毎年8月、網に牡蠣と海苔の種をくくりつけ、海中に沈めます。そして11月、ネットを引き揚げ、海苔が完全に生育するまで乾燥させます。もちろん収穫後も化学的なもので洗浄することはありません。

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続けて、上質なトマトとトマトジュース(1本1万円です!)で有名なマルセンファームへ行き、生産者の千葉さんの案内で農場と温室を見せていただきました。

その次は、MSC認証のカツオを扱う株式会社 明豊で松永さんにお目にかかりました。2012年に塩竈市で創業し、2016年に日本で3番目のMSC認証を受けています。全てのカツオは一本釣りで揚げられており、釣竿などの道具や、どのように釣り上げるかも実演していただきました。
松永さんは2011年3月の東日本大震災で被災した後に会社を設立し、困難な時期もありましたが、現在は2艘の一本釣り用の船を所有し、年間3,000トンのカツオとビンナガマグロを漁獲しています。

松永さんは10年前に初めてMSC認証のことを知り、日本の漁業が危機に瀕し、管理がゆき届いていないことに驚き、奮起して認証を獲得しました。その後はマスコミでも取り上げられ、会社の知名度が向上するという恩恵を受けた上に、海洋資源の危機についても認知を高めることができたそうです。

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この日の夜は、石巻のホテル近辺にある「いまむら」という地元の食堂で素晴らしい食事を楽しむことができました。宮城の新鮮な魚介と地酒のマリアージュで。翌朝は午前5時に起床して石巻港へ行くので、早めに休むことにしました。
後編へ続く)  

※宮城産の食材を使い、「ニューヨーク グリル」で10月16日(月)~22日(日)までスペシャルコースメニュー)を提供いたしますので、ぜひご賞味ください!

ニューヨーク グリル&バー 料理長
ステファン ヘアット