Discovering Japan ~九州~ | シェフズブログ | パーク ハイアット 東京

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Takuya Ozawa

Discovering Japan ~九州~

こんにちは、パーク ハイアット 東京 副総料理長の小澤拓也です。
7月末に、ティボ総料理長と飲料部チームとともに 熊本~佐賀~福岡を巡る2泊3日の九州視察を行いました。

1日目 羽田空港から熊本の天草地方へ

天草海老の宮川
明治38年、日本で初めて車海老の養殖を始め、約100年天草近海で自社養殖をされている宮川さん。車海老の年間出荷量は、沖縄が約40tに対して、熊本天草は約70tと日本有数の生産量を誇り、熊本県の県魚にも指定されています。
その中でも、車海老養殖発祥の地である上天草産は肉厚で甘く、弾力ある身が特長。稚魚を海に放して3~4か月で大きく育ち、寒くなると動かなくなります。訪れた7月は、ちょうどお歳暮シーズンに合わせて養殖を進めている時期でした。ミネラルを豊富に含む天草の海ならではの利点を生かしながら、徹底した管理で高品質な生産体制を維持している養殖場が印象的でした。

福田果樹園
次は天草市から車で30分ほどの福田果樹園へ。
「食べたら元気になれる美味しいものを作りたい」という一途な思いと自身の経験から、無農薬、有機栽培、自然栽培にこだわったモノづくりを貫く福田さん。年間を通して、季節に応じた多様な果物・野菜を約100種類栽培されています。栽培方法や環境への配慮、妥協しない品質管理が際立ち、生産する方のあたたかく高い志を強く感じました。


とばせ農園
熊本・宇城にある戸馳(とばせ)という小さな島で、国産バニラビーンズの栽培にチャレンジし、生まれ故郷の新しい特産品づくりに取り組んでいるとばせ農園。
代表の中川さんは「誰も出来ないことをしたい」という情熱で、家業は胡蝶蘭農家でありながら、バニラビーンズの他にも、安全で美味しいアボカド、パッションフルーツの栽培を手がけておられます。農園のみならず、戸馳島の魅力を発信するためのコンテンツ作りについての熱意溢れるお話も心に残りました。


天草大王
また、一時は絶滅の危機に瀕し、その後長い年月をかけて復活を遂げた幻の地鶏、天草大王の飼育農場にも伺いました。
職業柄、家禽類は見慣れている我々ですが、体長90cm、体重7㎏にもなる大型の群れに圧倒されました。程よい弾力の肉質、絶妙な食感とジューシーな味わいが特長の天草大王は、阿蘇の雄大な自然のもと、こだわりの飼料とミネラルたっぷりの阿蘇の伏流水で育てられています。

菊鹿ワイナリー
ワイン用ブドウの主要産地である山鹿市菊鹿町で、より地元に根ざしたワイン造りを目指して立ち上げられたブランド、「菊鹿ワイナリー」。1999年にブドウ栽培をスタートし、2018年には自社農地にも拡大した同ワイナリーは人気の観光スポットでもあります。現在は赤ワイン用5種、白ワイン用2種の計7種を栽培。従業員の方がいきいきとエネルギッシュに働く姿に、私たちも元気をもらいました。

李荘窯業所
有田焼の陶祖 李参平の住居跡に開業した「李荘窯業所」。“美しいモノは幸せを呼ぶ” をモットーに、蓄積されてきた伝統と技術を駆使しながら時代に左右されない美学を追求されています。アトリエでは、成形、施釉、絵付け、焼成の制作工程を見学させていただきました。


富久千代酒造
有明海に面した風光明媚な場所に蔵を構える富久千代酒造の創業は1923年。「鍋島」は創業から75年の時を経て、唯一無二の酒を求めた3代目の飯盛直喜さんが、こだわりの米と水を用いて1998年に誕生させたブランドです。普段は非公開の登録有形文化財である酒蔵見学とあわせ、酒造りについて細やかに教えていただきました。醸造中のお酒の香りを体感するという貴重な経験も忘れがたいものとなりました。


3日目 福岡へ

福岡市中央卸売市場鮮魚市場
朝3時、日本で最も早くセリが始まる鮮魚市場は博多漁港のすぐ横に位置しています。
ここは九州・西日本各地から、玄界灘、日本海や東シナ海などの漁場で獲れた新鮮な魚介類が集まり、年間約300種類の魚種を取り扱う全国でも有数の市場です。海の恵みに満ちた玄界灘の魚は、荒波に揉まれて身が引き締まり絶品。人々の活気が溢れる場内は、まさに「魚の美味しいまち・福岡」を支える博多の台所という様相。仲卸業界でトップの取扱量を誇る「アキラ水産」の方々にも、大変お世話になりました。


三宅牧場
博多和牛は、登録された福岡県内の農家が、約20ヵ月間という長期にわたり丁寧に育てる、県が誇るブランド牛です。十数年前に「生産者の会」を立ち上げ、福岡のブランド牛に関するルール・規準作成を牽引した三宅牧場は、その第一人者。
大きな特徴はその「餌」です。福岡県産の稲わらを主食として良質な飼料で育てられており、訪問した三宅牧場も畜産と米農家の両方を兼ねています。稲わらを牛へ、牛糞を米に使うサステナブルな「循環型農業」で美味しさと安全を届けているとのこと。また、牛のストレスを軽減するため、管理目的の鼻輪は使用せず、牧場では音楽が流されています。
三宅牧場の博多和牛は平成23年度九州管内系統和牛枝肉共励会で福岡県初の金賞、平成29年には和牛のオリンピックとも呼ばれる全国和牛能力共進会で1等を受賞したということです。

博多とよみつひめ  
「博多とよみつひめ」は福岡県の限られた農家のみで栽培されているプレミアムいちじくです。流通量の少ない希少品種で、豊前で作られ蜜のように甘く姫のように手がかかるということから「とよみつひめ」と名付けられました。平均糖度17度以上といわれる濃厚な甘さが魅力で、ひとつひとつ触っていちじくの硬さを見極めながら手摘み作業を行うため、収穫時期は多忙を極めるそうです。


コスモファーム
久留米市北部に本社のあるコスモファーム。雨が降った後の訪問でしたが、農園のまわりは田んぼのお陰で空気が非常に爽やか。“安全で美味しい野菜を食べてほしい”という願いを込めて多種多様な野菜作りに励まれ、福岡と北海道の産地リレーによる通年栽培を行っています。
今回はベビーリーフの栽培についてご説明いただきました。水耕ではなく土で育て、1ヵ月もかからず収穫されるベビーリーフは、水菜 、 小松菜 、 ロケット 、 ビーツ 、 タァサイ、レッドオーク、レッドリーフ、赤リアスからし菜など、1パックに5~7種類の野菜がブレンドされています。苦味、えぐみが少なく非常に柔らかなテイストでした。

今回の九州訪問では、生産者の方々が抱くモノづくりや地域への熱い思いに触れ、大いに刺激を受けました。この素晴らしい体験を糧に、パーク ハイアット 東京のリニューアルオープンに向けて準備を進めてまいります。