シェフズジャーニー<青森> | シェフズブログ | パーク ハイアット 東京

CHEF’s BLOG

Julien Perrinet

シェフズジャーニー<青森>

こんにちは。
パーク ハイアット 東京 エグゼクティブ ペストリーシェフのジュリアン ペリネです。

先日、ペストリーキッチンで一緒に働いている伊藤、秋元を連れ、資材部スタッフとともに青森県を訪れました。まだ薄暗い早朝の東京駅に集合し、新幹線の始発に乗り込み約3時間、私にとって初めての青森訪問です。

この度の視察は、私が資材部に懇願して実現しました。
「ペストリー ブティック」で今年のホリデーシーズンに提供するラインアップの中に「ブッシュ オクシタニー」というクリスマスケーキがあります。カシスとブルーベリーのゼリーをマロンムースでつつみ、濃厚な栗の味わいと果実の酸味が織りなすマリアージュに、アールグレイの風味を添えた自信作です。栗とカシスは南フランスのオクシタニア地方の名産であることから、「オクシタニー」と名付けました。まさに青森では高品質の栗とカシスを栽培していると聞き、実際に訪れてみたいと考えたのです。

まず初めに、日本一りんごが集まる市場と言われている弘前総合地方卸売市場へ。

見てください、この一面のりんごを!
初めて見る多種多様な品種と量に、一同目を奪われました。
この日だけで約9万箱もりんごが競りにかけられ、かなりの量を保管もしているとのこと。広大な市場は、甘酸っぱいりんごの香りに満ちていました。あまりにもテンポが速い競りのかけ合いに、同行した日本人スタッフたちも全くついていけないと驚いていました。

いくつか品種の異なるりんごを試食させてもらいました。「ふじ」、「ぐんま名月」、「シナノゴールド」、「シナノスイート」、「グラミースミス」、「ピンクレディ」など、中には初めて聞く品種も含まれ、それぞれの持つ個性を味わうのは、興味深く楽しいひとときでした。似た名前でも「シナノゴールド」と「シナノスイート」のテイストは明らかに異なり、私は甘味の強い「シナノスイート」が気に入りました。

続いて弘前市内にある「りんご公園」へ移動して、みんなでランチタイムです。およそ5.2ヘクタールという広大な敷地には2300本ものりんごの木があり、「りんごの家」という施設で名産品販売に加え、ここでしか食べられないオリジナルメニューの提供も。私は「りんごラーメン」をチョイス。塩ベースのあっさりしたスープと、りんごが練りこまれたほんのり甘い麺が絶妙な組み合わせでした。

午後の視察は弘前市郊外にある「小栗山農園」からスタート。古くから栗の産地だった弘前市小栗山で農園を営む工藤格栄さんに面会。 除草剤を使用せず有機肥料を施すこだわりの栽培方法で大きく立派に実った栗は、生果として市場に出すのではなく、すべて工藤さん自らが丁寧にペーストとして加工し、菓子職人に卸しているそうです。
実際に、栗と砂糖だけで作られたできたてのペーストを試食させてもらいましたが、「丹波栗」と同じ品種ということもあり、甘味も強く非常に濃厚な味わいでした。フランスの栗も和栗も好きなので、創作意欲が大いに刺激されました。私たちが栗拾いを体験できるよう、一部収穫を待っていてくれた工藤さんの優しさも嬉しい旅の思い出です。


次に訪れたのは「はつ恋ぐりんの会」。品質、生産、販売の安定を図るため、海外では最近一般的になったクラブ制の仕組みを取り入れている組合で、会員のみが「はつ恋ぐりん」の栽培を許されています。会長の今智之さんにお話を伺いました。



   
「はつ恋ぐりん」は、パリっとした食感と少し強めの酸味が特徴で、またその艶やかな美しい緑色も人気の青りんごです。えくぼのようなくぼみを伴う斑点が出やすいため、なかなか市場に生食用として流通することは少ないと聞きましたが、加熱しても酸味が残り、水分が飛ぶことで濃厚な味わいが際立つとのこと。実は、この後すぐに試作にとりかかり、このりんごを使った自信作のアップルパイを「ペストリーブティック」で提供中です。


 
青森県庁に戻り、最後に「あおもりカシスの会」の皆様にもお会いし、カシスはもちろん、洋梨やシードルなどもテイスティング。冷涼な気候がカシスの生育に適しており、青森市は日本一のカシス生産量を誇ります。「あおもりカシス」は、1975年の栽培開始以降、品種改良などの手を加えることなく育てられており、原種ならではの力強い風味、豊かな栄養成分が輸入品・他品種との大きな違いです。確かに今まで食べてきたカシスよりも野性味があり、栄養価の高さも感じられました。

新幹線の終電に乗り、午後11時過ぎに帰京。滞在時間10時間とはいえ青森の魅力を満喫した視察旅行は、新しい発見に溢れた充実の1日でした。栽培状況や生産者の方々の想い、プライドを目のあたりにし、自分自身もシェフとして多くのことを学び、今後の創作に向けて大きなインスピレーションを得ることができました。

お世話になった青森県庁、生産者の皆様、本当にありがとうございました。
私の願いを聞き入れ、視察を企画してくれた資材部チームにも感謝いたします。

どうぞ今年のクリスマスケーキにご期待ください!

パーク ハイアット 東京
エグゼクティブ ペストリーシェフ
ジュリアン ペリネ