Discovering Japan ~八郷蒸溜所~
こんにちは、パーク ハイアット 東京の料飲部マネージャーの横田保和です。
10月中旬に、茨城にある八郷蒸溜所へ視察に行ってまいりました。
パーク ハイアット 東京の社員総勢14名が「バーバス常陸野」に乗り、八郷蒸溜所へ向かいました。木内酒造の有名な「常陸野ネストビール」のフクロウのロゴが描かれたバーバスには、木内酒造の歴史を学びながらウイスキー、ジン、ビールを試飲できる特設バーカウンターもありました。
木内酒造は常陸野の地で200年の歴史を持つ酒造メーカーです。2020年、国産原料を使用したジャパニーズ・ウイスキーを製造する新事業「八郷蒸溜所」を立ち上げました。また、木内酒造は日本酒だけでなく、ビール、クラフトジン、梅酒の製造も行っています。今回訪問した八郷蒸溜所は新宿からバスで約90分、筑波山麓に位置しています。昼夜の寒暖差が大きく、良質な水が湧き出ることが、この地に蒸溜所を構えた理由だそうです。
酒と食を通じて常陸野地域の魅力を再発見することを目的に、使われなくなった地域の公民館を蒸溜所に転用するなど、地域資源の活用とリサイクルに力を入れています。
見学では、麦芽の破砕から発酵、蒸留、熟成、ブレンドまで、ウイスキー製造の全工程を紹介していただきました。
輸入大麦を使用しても「ジャパニーズ・ウイスキー」と謳うことは可能ですが、木内酒造は日本の豊かな自然環境を生かした独自のジャパニーズ・ウイスキーを目指しています。歴史的に茨城県は日本最大の大麦産地でしたが、貿易の自由化に伴い、国産ウイスキーメーカーも廉価な輸入麦芽を使用するようになり、国内の大麦栽培は衰退していきました。「茨城産の大麦で国産ウイスキーをつくりたい」という思いから、木内酒造は茨城産大麦の栽培に力を入れ続けています。また、日本酒やビール製造の知識と経験を生かし、自社で培養したオリジナル酵母を使用してウイスキーを製造し、ブレンドに個性を加えています。
木内酒造の地元の原材料に強く焦点を当て、酒造りの過程で出る米の削り粕の再利用し、独自の酵母を使用していることに非常に感銘を受けました。
原酒ウイスキーの熟成は主にバーボン樽で行われ、シェリー樽、ワイン樽、スモーキーなスコティッシュウイスキー樽などが補完的に使用されています。さらに、国内で調達された桜の木を使用して作ったユニークな桜樽でもウイスキーを熟成させています。興味深いことに桜樽で熟成されたウイスキーには、桜餅を思わせる繊細な風味があると言われています。
製造工程を見学した後、ウイスキー原酒のテイスティングを体験しました。
その際にウイスキーと共に、ウィスキーの麦芽粕を飼料として育てられた常陸野ポークを使った生ハムとソーセージをいただきました。この生ハムやソーセージは敷地内にある常陸野ハム工房で生産されおり、ウイスキー樽のチップを使って燻製されるため、「バレルスモーク」というブランド名が付けられております。
ほんのりとスモーキーな香りをまとったシャルキュトリーとウイスキーの組み合わせは、まさに完璧なマリアージュでした。
試飲の際、幸運にも木内酒造の社長である木内氏が同席され、自身の体験談と共に、ウイスキーのブレンドについて詳しく説明してくださいました。
初めてスコットランドを訪れた時から、日本のウイスキーを作りたいという強い情熱を抱いており、その願いは八郷蒸溜所の立ち上げによって実現。2023年には地元で生産された穀物をモルト加工し、製造することが可能になったとのことです。
木内氏は、「私たちはこの地域の自然と人々と共に手を取り合って歩んでいきます」と語ります。
木内酒造について学び、持続可能性や地域との調和に向けた真摯な取り組みを知ることができたのは、私たちにとって素晴らしい体験でした。